2022年2月4日
No. 38

NOTE

ウオジラミの体制 Caligus属、寄生性カイアシ類

ウオジラミという名のカイアシ類がいます。Caligidae(ウオジラミ科)に分類し、主に魚類の体表や鰓に寄生します。体は扁平で、頭胸部は吸盤としての働きがあり吸着基盤に吸着します。Caligidae(科)以外でウオジラミのような外観をもつ分類はいくつかあり、Dissonidae、Trebiidae、Pandaridaeがその例です。これらをまとめてCaligiform(ウオジラミ形?)と呼ばれます。以前はCaligoida(目)としてまとめられていましたが、現在はSiphonostomatoida(シフォノストム目)下の扱いです。Caligidae(科)、とくにCaligus属はCaligiformの中では種数が多く、普通に出現しますので、大抵のCaligiformはCaligus属の種です(次いで同科のLepeophtheirus属)。今回はウオジラミの基本体制としてCaligus属を紹介します。

Fig. 1にウオジラミ基本体制の例としてCaligus macarovi Gusev, 1951を載せます。50%乳酸に常温10分間液浸し、10分間90℃で加熱して、透明化してあります。いくつかの部位は日本語の名称がないため、浦和ら(1979)を参考にし、筆者が名付けました。英語名は( )内に示しました。第3胸脚のapron(エプロン)は丁度良い日本語がないため、英語名そのままの表記です。apronは胸脚の基節と底節、左右の胸脚をつなげる胸脚結合板が扁平に肥大化した部位です。研究者によっては、後口突起を第1小顎と称し、続く付属肢を第2小顎とする場合や、小顎を第1顎脚とし、第2顎脚と続けて称する場合があります。ただし、その発生には議論があり、ここでは、浦和ら(1979)に準じています。

ウオジラミの基本体制
Fig. 1 ウオジラミの基本体制

頭胸部は吸盤としての働きがあります。その吸着メカニズムはOhtsukaら(2021)でまとめられています。宿主に接触すると、①第1、2胸脚で前方へ這い、吸盤(lunules)の仮吸着をさせ頭胸部と吸着基盤の空間をつくり(lunulesを持たない種は第2触角と顎脚で吸着基盤をつかんで保持する)、②後体部の持ち上げで頭胸部空間の後方、第3胸脚と吸盤基盤に隙間を開け、③第1、2胸脚で頭胸部空間内の水を後方へ押し出し排水し、④隙間を閉じて、第1~3胸脚を元の位置に戻し、頭胸部空間の内部を減圧し、強い吸着となるようです。

文   献

Ohtsuka S, Nishida Y, Hirano K, Fuji T, Kaji T, Kondo Y, Komeda S, Tasumi S, Koike K, Boxshall GA (2021) The cephalothoracic sucker of sea lice (Crustacea: Copepoda: Caligidae): The functional importance of cuticular membrane ultrastructure. Arthropod Struct. Dev., 62: 101046.

浦和茂彦・室賀清邦・伊澤邦彦 (1979) アカメに寄生していた橈脚類,Caligus orientalis. 魚病研究 13 (3): 139-146.